これまでにも多くのゲームが、ゲーマーからの発売前の期待を背負って世に放たれて来ました。
「センチメンタルグラフティ」とか「RAGE」とか。
期待の高さという意味に於いては近年、稀に見るほどの高度であったろう一作、
人々の夢と希望を担い、
デジタル世界のドミネーターことUbiが放つ次世代(前世代ともマルチ)新規IP大作、
「ウォッチドッグス」が、
遂に発売となりました!
ほんと、
天を突くほど高まったハードルを前にして、
期待と不安を前にプレイし始めた方も多いことでしょう。
私もPS4のソフトが不足してる中、期待してたといえば勿論そうですが、
それ故に或る程度冷静に、少し心を落ち着けてじっくり見てみようという気持ちで、
初出の情報を見た時からすればかなり抑えた感じで判断しております。
海外レビューでの前情報では、革新性よりもGTAぽさが目立つという批評だったのもあり、
また、最初に出ていた画像と比べると途中からグラフィックのレベルが下げられ、
PC版でその初期のクオリティのテクスチャだかなんだかが発見され物議を醸したり、
多少不穏な空気があったのも事実です。
しかし、高まったハードルからの眺めではなく、なるたけ冷静な目で見る為にも、
実際の所「ウォッチドッグス」を遊んでみてどんな感じだったのか、出来るだけ初見のピュアーな感想を、
取り敢えずPS4版における序盤までのプレイから導き出してみたいと思います。
公式
http://www.ubisoft.co.jp/wd/
まず、いきなりトップ画面がエッジの効いたデザインでナイスです。
いかにもデジタルウィザードでスーパーハッカーでサイバーといった感じ。
けっしてバグってる訳では無い(と思う)。
主人公のエイデンさんは帽子の似合うハッカー。
かつて故意に引き起こされた事故により、姪っ子を亡くしています。
その事故を引き起こした人間を追い詰めて尋問してるといういきなりなシーンからゲームは始まりますが、
ここでまずこのゲームの特色であるハッキングの、視覚的なユニークさは充分に堪能できる事でしょう。
「Deadspace」以降よく見掛ける様になった拡張現実的HUD表示みたいな物の集大成といいますか、
浮き上がる文字とかそういったビジュアルをフルに活用し、題材的にも類似ジャンルとの違いをアピールしています。
ちょっとローカライズに当たって、こういった表現がダサくなる事態を事前から軽く心配していたのですが、
幸いフォントなどにもそういった類の違和感は殆ど無く、
サイバー世界の興を殺ぐ様な事無く上手いこと日本語化してくれていたので、まずは一安心です。
また、フルローカライズの吹き替え版となっておりますので、
GTAと違って、雑踏に交じる声やラジジオニュースなんかからの声が日本語で聞こえてくるのも良い感じです。
主役含めた主要キャラのボイスアクトに関しては、めちゃ良いって程でもめちゃ悪いと云う程でもなく、それなりといった感じでしょうか。
(個人の感想です。)
GTAの話が出るからには避けられないと思うんですが、
かなりそのまんまGTA系オープンワールドゲーです。ほんと。
「GTAV」以降、他の製作会社やプレイヤーが「GTAV」を意識するなってのも無理と言えますが、
正直最初の数時間は、
ボタン配置や車の挙動に違和感を感じるシカゴが舞台の「GTAV」でした。これはしかたない。
スマホによるハッキングで街行く人の情報が覗けるとか、魔法の様に街の設備を遠隔で操れるとか、
このゲーム独自のシステムや映像表現も、数多く提供してはいるのですが、
それが”「GTAV」ぽさ”を上回るほどのインパクトを残すかと言うと、微妙な所です。
勿論「GTAV」が好き過ぎだからとか、プレイしてなきゃそんなことないとかも言えますけど、
あっちがどれだけの売り上げを出したかは御存知の通りですし、それよりなにより、
この「ウォッチドッグス」自体、GTA以外にも多くの点で他のゲームのアイディアを取り入れており、
そのせいで革新的な驚きみたいなインパクトを抑えているという感じはとてもしています。
例えば同じUbiのアサシンクリード的なサイドミッション構造とか、フリーランとか、
或いは新生スプリンターセル的なカバーアクションや、遠隔カメラ視点とか、
様々なゲームにあるバレットタイムとか、
笑っちゃったのは初代のアーカムアサイラムにあった「リドラーチャレンジ」的なパズルがあったりして、
他にももっと細かいとこでもあると思うんですが、
どれも、
各ゲームの良く出来てるところを参考にしていいとこどりで取り入れているという感じが凄くするんですね。
それは良いゲームを作る為には或る意味正しい事なんでしょうけど、
良い所を集めたからこそどっかで見た様な印象になる。独自の尖った感触が乏しくなる。
他のゲームの名を上げて「○○っぽい」って感想を書くパターンってここでもこれまでよくやっているんですが、あまり良い事とは思ってなくて、
出来れば前例にとらわれずそれぞれをちゃんと表現すべきと思ったりもしているんですが、
このゲームに関しては、かなり意識してやっていることと思うし、そういうハイクオリティな良いとこ取りが、逆に大人しく無難な感覚のゲームにしてしまうという作用は少なからず有り得るんじゃないかと云う気はします。
サイドミッションは、「アサシンクリード」シリーズと同じ様なノリ。
そちらの感想の記事でも触れてたかと思いますが、
広大な箱庭の中に、ほぼ同じ様なミッションの繰り返しを複数配置し、それを反復的にやらせることによって箱庭の中の容量を詰める・・・
生きたオープンワールド世界の中に起きる事件と言うよりは、
漢字や数学のドリルに並んだ問題を、あるだけ次々解いていくという感覚が近い。
ここに関しては個人的な好みもあるとは言え、アサクリでも最も気になってた点でもあり、それ以外のゲームでもたまによく見る、
箱庭ゲームにおける一種ファストフード的なデザインなんじゃないかと思います。
Ubiはある種のゲームデザインのテンプレというか方法論として、これをやってるんじゃないかと想像しますが、
例えば、ベセスダのオープンワールドなゲームなんかだと、ちょっとしたとこに小さなストーリーを感じる様な”見付けても見付けなくても良いオブジェクト”があったりとかしますね。(例、おかしの箱やぬいぐるみといっしょに落ちてる白骨死体だとか、墓場に一輪の花が置いてあったりとか)
或いは、
その世界の中のルールに沿ってさえいれば或る程度プレイヤーにプレイを委ねる為、
抜け穴的な攻略や稼ぎなんかもあえて放置されてて、それを発見する事や使用するかどうかも本人の判断次第とか、
そういう裁量権を持たせる事と、箱庭の中に詰め込む具の自由さ(どこをやってもいいしスルーしてもいい)みたいなのが、
あれだけの人気の秘訣といいますか、大きなウェイトを占めている箱庭レシピかとおもいます。
「アサシンクリード」や「ウォッチドッグス」では、この具の詰め方に大きな違いが有り、
前述のドリルの様に消費するコンテンツが無機質に詰められている世界になっています。
せっかくのハッカー達によるサイバー世界でのフリーダムさ、デジタルのルールを破壊する力、みたいなのが、
オープンワールド自体のシステムとしてはカバーされておらず、
住民のデータが表示されるとか、たまにいる小銭持ってる人に対してボタンを押せばお金もらえるとか、そういうのに留まっている。
だって、ハッカーならそこらの住人の貯金全額引き出すとかだって、やろうと思えば出来る筈でしょう?
街にあるお店なんて使わなくても、商品全部家に送らせるとかだってやれるでしょう?
それにより血眼で追われるとか、そういう流れだって有り得る筈じゃない?
車によるレース的なミッションや車列襲撃といったミッションなどがありますが、
例えば本当にハッカーなら、
そのレースの残りタイムをハッキングして残り秒数を増やしたりとか、出来たらいいなとか当然思うじゃないですか。
クリアタイムのランキングとかが表示されるんですが、
そのランキングをいじって世界一位になったりしてもいい筈じゃないですか。
でもそういうのはやれないんですよね。自由度とかそういう話でなく、ハッカーなら考えそうな事じゃないですか。
それがシステムに作用する事が無いので、その不満は住民に向かうことになります。
車列襲撃ミッションの意味が最初よく分からず、
ガンガン銃撃してくる上グレネードまで投げまくる集団に対して、何故か車で爆走するのを止めてから駆け寄り接近攻撃のテイクダウンで殺さずに仕留めろと言うハードな目標を自分に課して10数回失敗したエイデンさん(職業スーパーハッカー)。
その鬱憤を晴らすために守るべき市民をご当地シカゴにちなんだシカゴタイプライターの乱射で血祭りにしようと躍り出たのですが、
そんな彼を容赦なく襲うのは、警察でもフィクサーでもなく、よくわからない
カルマシステムでした。
車奪うのはいくらやっても悪評にならないけど、過失致傷や射殺は罪!という倫理観に異議を唱えるつもりなないですが、
その溜まった悪評もハックでなんとかしろよと思うのは私だけでしょうか。
実はまだこの善悪ゲージの影響自体よく把握していないのですが、
一般市民を数人刺しただけで即ゲームオーバーだったアサクリと比べればまだ優しくなったとは言えます。
ちなみにストレス発散的に言えばどれだけ至近距離でショットガンを撃とうが出血は少ないですし、損壊も無いですので、かなり物足りないですしお子様ハッカーにも安心の内容です。(ceroZ)
個人差は(大いに)あるでしょうが、オープンワールドゲームでストレスが溜まった時に、好きなだけ無差別攻撃が出来ると言うのは、或る意味ではひとつの救いと言えるのではないでしょうか。
言えない?そうですか。じゃあいいです。
グラフィックに関してなんですが、言われていた初期情報からの劣化みたいなのは私は気にしてませんけども、
街の全体的な美しさはまだ別としても、キャラの造型や動きは結構平凡と云うか、お世辞にも凄いというレベルではありませんでした。
それこそロックスターの作品ならもっと表情豊かで生々しいフェイシャルなんかを実現してると思いますし、
カットシーンでのエイデンさんやその他のキャラの作り込みに関しては、もうちょっとなんとか出来たんじゃないかという感じです。
車がパンクして車輪から火花を散らす表現とか、水の質感とか、決してグラフィックが手抜きなどということはないのですが、
それらは期待される次世代のクオリティを超えた物なのか?と問われれば、その未来はまだここには無いと言わざるをえない。
車が接触するとやたらポンポン言うのとか、ハンドリングの感触とか、
GTAOをプレイし続けてると感じるあの世界に生きてるという自然なフィーリングと比べてしまうと、
慣れもあるんでしょうが違和感を禁じ得ないのが残念です。
RDRやGTAOのフリーロームを意識したのか、
このゲームも
「オンラインとオフラインがシームレスなプレイ」を掲げています。
一人でやってると他のプレイヤーに侵入されて対戦とかが出来たり、フリーロームなロビーに行けたりが出来るのですが、
この設計に関しては、正直期待をさせ過ぎたと思います。
対戦でやられてリスポンする度にローディング画面になるとはとんだシームレスだね!銃撃戦の他にも、いろいろ考えた上でのルールなんでしょうが、
そのことごとくがおもしろいゲームになってるとは思えない。
アサクリの対戦最初に見た時は革新的だと感動したものですが、
このゲームのかくれんぼプレイとかに比べればそれ以外のマルチプレイも大概は感動するでしょう。
いや、数戦しかしてないので、まだ本当の面白さに気付いてない、あさっての感想なのかも知れない。
それも勿論なんですが、でも、最初の数戦で「もういいかな・・・」って気持ちになる時点で或る程度アレです。
シームレスってこういうのだっけ?ハッキングってこういうのだっけ?
そんな気持ちになる時点で、恐らく成功はしていないのでしょう。
気になった点を厳しく挙げてしまってはいますが、プレイが楽しく無いかと言えばそう言う訳でもないです。
急なフォローって訳では無いですが、主にハッキングなどを絡めた部分で光る所は多いです。
監視カメラを渡り歩く様に乗り移っていって、遠隔操作で敵を排除していくのは面白いメカニックです。
ここをもっと重点的に配置して、「刻命館」とかそんな感じのプレイにして、いっそオープンワールドとしては縮小しても良かったんじゃないかと思う位。
アサクリの3や4で暗殺を縮小して海戦にシフトしても良いんじゃないかと思った時と近い気持ちです。
それに、色々な障害を起動しながらのカーチェイスも、上手くやれればかなり楽しいシーン。
橋を上げたり信号を変えたり、タイミングを見て車止めやパイプ爆破のスイッチを入れてウザい敵車をテイクダウンするのは、スピード感のあるアクションとして楽しいです。
問題はそれをスキルアンロックにしてる点。ありがちな話ですけど、そういうのは最初からオープンにしていこうよ。
運転自体の挙動に違和感とか、ドライブバイ(車から射撃)が出来ないとかいった難もあるんですが、
ハックを絡めたアクションに関しては色々な応用や面白いアイディアの活用が出来るんじゃないかと思います。
シューターとしては、リロードが左スティック押し込みなのがカンベンな気持ちなんですが、
体力も少ないですし、銃撃自体はそんなに重要視しなくてもいいのかなと云う気はします。
もっとハッキングで戦って、ステルスで上手い事テイクダウンする、というのにフォーカスしたゲームでもよかった。
シカゴタイプライター乱射もそれはそれでいいものですが。
なんにせよまだ序盤なのであくまでもそこまでのファーストインプレッション及び個人的な感想なのですが、
ぶっちゃけ、
ネガティブな感想の大半が上げすぎたハードルのせいなのだけは確かだと思います。
色々な意見はあるでしょうが、件のGTAVや他ゲームとの比較や、次世代オープンワールドへの過度の期待などといった、単体として見辛くさせる要素の多さについては、批評者の多くは自覚的じゃないかと思います。
それを排して見た場合には、
オープンワールドへの味付けとしてのハッキング、
そつなくも各種盛りだくさんなシステム周り、
シカゴ市民歓喜の美しい街並みへの介入、
サイバーらしいスタイリッシュなグラフィックセンス、
といった見所には大きな意義がある一方で、革新性の少なさやUbi製箱庭の反復作業が影を落としているのも確か。
すぐ死に易い上にローディングが長めだったり、
自由さを見せる為か、ゲーム開始直後から一斉に色々なミッションを開放し過ぎて導線としてごちゃごちゃしてるとか、
デジタル覗き見や自警団的行動に正当性を持たせる様な目的意識或いは快感の不足とか、
基本的な所で居心地がそんなに良くない気分になるのもオープンワールドとしては珠に瑕でしょうか。
ハッキングというアナーキーで無限の可能性に満ちた題材を選びながら、
その扱いに困り、自ら嵌めた枷はオープンワールドゲームとしての出来そのものを矮小化しているのではないかと言えます。
エイデンさんのストーリー自体は始まったばかりでまだまだこれからですし、
徐々に能力が開放された後に印象が変わる可能性も高いですので、
今後のプレイによって感想が変わる事も充分考えられますし、今は取り敢えず続きを楽しみにやりたいとおもいます。
なんと言いますかね、オープンワールドというジャンル物の評価としては高くは無いが、
アクションやビジュアル等に対してそれ自体のクオリティの低さがあると云う訳では無いと思うんですよ。
それを最終的な評価としてどう判断するかは、個人の意見が分かれると思うし、フェアに表現するのは結構難しいんじゃないですかね。
一応私は、人の話が終わった途端にスマホ見始めるエイデンさんに何故か親近感を覚えますし、
「ドラゴンタトゥーの女」に出てきたハッカーの女性にそっくりなハッカーの女性が出て来た辺りで、ちょっと変な笑いが出てきましたので、かなり楽しめてるんじゃないかと思います。
あとはキーボードをすっごいスピードでたたきまくって「カモーンカモーン」言うハッキングシーンを入れてさえくれてれば、すべて言う事なしなんじゃないかと。